LifeFilm Case 03
73歳|ギタリスト|東京
仕事が変わっても、
音楽から離れなかった。
若い頃に出会ったギターを、
いまも毎日弾き続けている男性。
仕事が変わっても、暮らしが変わっても、
その人の中に残り続けてきた音を記録しました。
音楽から離れなかった時間
学生時代にギターと出会い、
演奏で収入を得ていた時期もありました。
卒業後、安定した道ではなく、
迷わず音楽の近くへ進みました。
音楽事務所で働き、
自分の力を確かめるために、
一人でニューヨークへ渡ったこともあります。
やがて仕事は変わり、
50歳を機に音楽業界を去りました。
それでも、
音楽から離れたことはなかったといいます。
今も毎日ギターを弾き、
学生時代からの仲間たちと、
50年以上続くバンドで演奏しています。
死んだときは、
自分の音を持っていきたい
撮影のきっかけは、
日々交わしていた会話の中にありました。
音楽について尋ねると、
いつも生き生きと話す人でし た。
ある日、
彼はこう語りました。
「死んだときは、
自分の音を持っていきたい」
その言葉に込められたものと、
長く身体の中に残ってきた音を、
今のうちに映像へ残すことになりました。
一人で弾く音と、仲間と重ねる音
自宅で話を聞いたあと、
彼はギターを手に取り、
おもむろに弾き始めました。
弦の上を滑らかに動く指。
音に合わせて変わる表情。
部屋に響く歌声。
別の日には、
仕事を終えたあとに同行し、
御茶ノ水のスタジオへ向かいました。
そこには、
半世紀以上ともに演奏してきた
仲間たちが待っていました。
一人で毎日続けてきた音と、
仲間と長く重ねてきた音の両方を記録しました。
撮影が終わった後
半生を聞きながら、
いろいろなことを尋ね、
長い時間、話を聞かせてもらいました。
撮影の最後に、
彼はこう言いました。
「本当に、良い時間だったよ。
こんな時間、滅多に持てない。
貴重だよ。ありがとう」
そう言って、
顔をくしゃくしゃにして、
嬉しそうに笑っていました。
その笑顔が、
いつま でも心に残っています。
まだ奏でられる、今のうちに
長く続けてきたものほど、
本人にとっては、
あまりにも日常になっていることがあります。
毎日楽器を手に取る姿。
長年の仲間と音を重ねる時間。
その人にしか出せない音。
それらは、
いつまでも同じ形で続くとは限りません。
仕事や暮らしが変わっても、
半世紀以上離れずに生きてきた音を、
今の姿とともに残しました。